2026/8/3
秋川牧園見学会レポート
7月7日・8日、山口県「株式会社秋川牧園」本社を訪問、視察・学習会を開催いたしました。
秋川牧園さんのご協力により生産者の会かねてから大切に温めてきた企画が実現しました。畜産業界他、農産、水産、加工食品、生産者のジャンルを全国各地からたくさん生産者会員みなさまにご参加いただきました。おかげさまで開催後の参加者アンケートでも満足度が非常に高く好感触な反応をいただいております。
1)開催報告:秋川牧園 見学会にいってきました
秋川牧園さんからは「安心・安全・健康な食べものづくり」を掲げた誠実な企業姿勢、事業活動をご説明いただき現場の視察を通して理解を深めました。地域全体のネットワークの力を結集して、食の未来を創造している秋川牧園さん独自の試みを一行で見てきましたのでこのレポートでご紹介します。充実の見学会の様子を
御覧ください。
▼秋川牧園さん本社前にて記念撮影

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2) 口に入るものは間違ってはいけない。
受け継がれる「生産者の戒め」
今から50年以上前の1972年、小学校の跡地を活用し、親子4人でスタートした秋川牧園。当時は海外からの安価な輸入鶏肉に押され、国内の養鶏場が次々と倒産していく厳しい時代でした。その中で「原点に帰って健康な食べ物づくりをしよう」と創業されました。

その根底にあるのが、秋川社長の祖父が残した『口に入るものは間違ってはいけない』という言葉です。食をつくる生産者たる身を厳しく戒めるこの教えは、今も会社全体で最も大切にされています。

最初は「残留農薬の残らない卵」から始まりました。当時、食物連鎖を通じて化学物質が体内に蓄積する「生体濃縮」が社会問題になる中、「生体濃縮の心配のない、安心な卵をつくる」という高いハードルへ挑戦。この誠実な姿勢が、今へつながる信頼の第一歩となりました。
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3. 若鶏の基礎知識と生産ネットワーク
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秋川社長に続き営業部長の佐藤尚志氏より、秋川牧園の若鶏の基礎情報、徹底された飼育管理と独自の流通構造について講義を受けました。そこには安全で美味しい若鶏を支える地道な積み重ねがありました。

① 100%植物性飼料が生み出す「美味しさ」
畜産業において、最大の原価は人件費ではなく「飼料(エサ)」です。秋川牧園では、一般的なエサに比べて約1.5倍(キロ単価で5割高)という高いコストをかけ、油脂や動物性骨粉を一切使用しない「100%植物性飼料」を徹底しています。 この動物性原料の徹底排除こそが品質への最大のこだわりであり、鶏肉特有の「獣臭さ」がない高い品質と美味しさを実現しています。
② 直営と提携農家が織りなす、強固なネットワーク
生産の基盤は、直営農場と北九州・山口エリア(宮崎や熊本を含む)の提携農家ネットワークの絶妙な組み合わせによって支えられています。
若鶏: 全体の約3分の2が直営農場(熊本・福岡県境に大規模拠点を配置)、
約3分の1を信頼できる提携農家がカバーしています。採卵鶏(たまご): すべて直営農場のみ(約11万羽規模)で生産。
自然の光や風が入る開放型鶏舎を採用し、そのうち1割には「平飼い」を導入しています。
乳牛: 直営牧場と委託農家を組み合わせ責任を持って生産できる体制を
整えています。「つくる責任」を全うするため、自分たちの目が届く範囲で直営と提携のバランスをとりながら、持続可能な生産ネットワークを築き上げている姿が非常に印象的でした。
▼試食風景

主な質疑応答(抜粋)
Q.「美味しさ」へのこだわりはどこから生まれるか?
A. 鶏をより美味しくするための「餌への特別なアディティブ」はしていません。動物性の油脂や骨粉をエサから排除し、快適な環境で「健康に飼う」という引き算の農法によって嫌な臭みを無くし、素材の美味しさを引き出しています。加工品については、専門の商品開発チームと社内食味テストによる「消費者として嬉しいか」を妥協しない開発プロセスが強みです。
Q.上場によるデメリット、株主からの利益追求と「こだわり」のジレンマは?
A. 上場コストや、規律を守るコストは発生します。しかし「社会の存在(公器)」となることで会社の背筋が伸び、強い規律の中で経営ができるメリットの方が遥かに大きい。機関投資家ではなく、理念を共有する社員や個人株主がメインの株主構成であるため、こだわりを維持したまま、温かい株主総会を運営できています。
Q.人手不足(海外実習生・地元雇用)にどう対峙しているか?
A. 人手不足は本当に深刻です。従来型の「背中を見て仕事を覚えろ」という体質から脱却し、ようやくこの5年で体系的な人材研修制度を整え始めました。また、地域貢献(飼料米プロジェクト等)によって「地域に絶対なくてはならない存在」となることが、長期的には雇用確保につながると信じて活動しています。

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3. 生産から加工、お届けまで
「他人任せにしない」責任体制
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秋川牧園の強みは、生産・加工・販売までをすべて自社で一貫して行う「責任体制」にあります。特に力を入れているのが「加工」の分野です。年間230万羽を処理する自社専用の処理場(熊本県)をはじめ、ナゲットや焼き鳥などの冷凍食品(年間100品目以上)も自社で製造しています。非常に複雑なオペレーションですが、「安心のバトンを途中で断ち切らない」ために他人任せにしないことを徹底されています。

造り手の立場に加えて「直販(自社宅配)」にも創業時から挑戦し続け、現在では首都圏を中心に多くのファンに支持されています。「生産者だからこそ、お届けまで大事にする」という姿勢が深く息づいています。

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4. 常識を覆す「無投薬飼育」と4つのこだわり
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秋川牧園の代名詞とも言える「若鶏」の育て方には、独自のこだわりがありました。今回は特別にバスの中から鶏舎の中も拝見させていただきました。地域の季節の移ろいも体感できる環境でのびのび育つ鶏たち。日本の食のあり方を考えさせられる情景でした。

①飼育密度:畳2畳に35羽以下というゆったりした密度で、のびのびと運動できる環境。鶏のバイオリズムに合わせ、夜は暗くしてしっかり眠らせます。
②飼育日数:一般的には約45〜47日で出荷されるところを、55日以上(〜60日)かけてじっくり育てることで、肉のうま味を蓄えさせます。
③飼料:遺伝子組み換えでない(non-GMO)飼料を使用し、動物性原料は一切不使用。これが「お肉の臭みがない」という美味しさの最大の秘密です。
④無投薬飼育:抗生物質・抗菌剤に一切頼らないため、3~4箇所に鶏糞を積み上げで発酵乾燥しながら水がかからないように洗浄消毒を行う方法や、鶏の出荷後に30日間鶏舎を空けて消毒を行う「オールイン・オールアウト方式」などにより、病気の感染原因を遮断しています。


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5. 鶏糞と飼料米が織りなす「理想的な循環型農業」
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15年前(2009年)から本格的に取り組んでいるのが、家畜の餌となる「飼料米」の栽培です。日本の農業を守り、自給率を向上させるため、昨年は173ヘクタールにまで拡大しました。
その「循環」の仕組みは、鶏を育てた際に出る「鶏糞」を発酵熱で完熟させ、高品質な堆肥にして田んぼへ戻します。その土で育った飼料米(昨年は1100トン収穫)を、再び鶏の餌として与えるのです。

この地域と連携したローコスト・多収穫農業は大きな成果を上げており、グループ内からは10年で4回も日本一(多収穫等の表彰)を輩出するほど地域全体のレベルが上がっています。
・現場にて取り組んでいる生産者のお話を聞きましたが、関係者チームワークで地域の環境自体や未来の食を守っている自負が伝わってきました。誇りをもって仕事に取り組める姿勢に感銘を受けました。

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おわりに:美味しさの秘密は「健康に飼うこと」
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秋川社長に美味しさへのこだわりを尋ねると、「実は、鶏肉を美味しくするために特別な小細工をしているわけではありません。餌の中に油脂や骨粉を使わないためくさみが出ない。とにかく健康に飼う、これに尽きます」と真っ直ぐに答えてくださいました。
「口に入るものは間違ってはいけない」という信念を守り抜き、鶏の健康を第一に考え、地域農業との循環までを見据える秋川牧園様の姿勢は、私たちが目指す「食の未来」に通じています。
秋川社長は「ネットワーク」という言葉を頻繁に使っていました。それは地域の作り手がワンチームで食の今と未来を守ることと理解しています。川上の生産者から川下も消費者へのお届けまで一気通貫で担当しているからこそ構築してきた秋川牧園の食の世界観、これからの発展が楽しみになる見学会となりました。
今回の学びを他地域の交流会にも生かしていくつもりです。
今後の各地の視察にもご期待ください。
町田正英
食の未来をつくる生産者の会 事務局
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